建設業者として守るべき主な事項

建設業許可は、取得して終わりではありません。許可を受けた業者(建設業者)は、建設業法等に基づき、業務運営や工事現場管理において様々なルール・義務を遵守するよう定められています。
これらに違反した場合、指示処分や営業停止、最悪の場合は許可取消などの厳しいペナルティが科される可能性があります。ここでは、建設業者が必ず遵守すべき主な重要事項を解説します。

01標識(許可票)の掲示(法第40条)

建設業者は、その店舗および建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に必ず所定の標識(建設業の許可票)を掲げなければなりません。※標識の材質(アクリル・金属・木製など)は問いません。

ア 店舗に掲げる標識(様式第二十八号)

サイズ規定:縦 35cm 以上 × 横 40cm 以上

建 設 業 の 許 可 票
商号又は名称○○建設株式会社
代表者の氏名代表取締役 山田 太郎
一般建設業又は
特定建設業の別
許可を受けた建設業許可番号許可年月日
建築工事業千葉県知事 許可(般-○)第○○号○○年○月○日
この店舗で営業し
ている建設業
建築工事業、大工工事業

イ 建設工事現場に掲げる標識(様式第二十九号)

サイズ規定:縦 25cm 以上 × 横 35cm 以上

※発注者から直接請け負った(元請)工事現場に限ります。

建 設 業 の 許 可 票
商号又は名称○○建設株式会社
代表者の氏名代表取締役 山田 太郎
主任技術者の氏名 山田 次郎 (専任の有無:【専任】)
資格名:1級建築施工管理技士 資格者証交付番号:第○○号
一般建設業又は特定建設業の別一般建設業
許可を受けた建設業建築工事業
許可番号千葉県知事 許可(般-○)第○○号
許可年月日○○年○月○日

02請負契約に関する義務(法第19条)

建設工事の請負契約は、口頭での合意でも民法上は成立しますが、内容の不明確さによる紛争を防ぐため、建設業法では工事施工前に必ず書面を交付し、署名又は記名押印して相互に交付することを義務付けています。

書面に記載しなければならない義務事項(全16項目)

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来高払の時期及び方法
  6. 設計変更又は工事延期・中止の申し出があった場合の工期・代金変更、損害負担の算定方法
  7. 天災その他不可抗力による工期変更又は損害の負担・算定方法に関する定め
  8. 物価等の変動に基づく工事内容の変更及び請負代金の変更額の算定方法に関する定め
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が資材を提供し、又は建設機械を貸与するときの内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の完成を確認するための検査の時期・方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事目的物の契約不適合(かし)を担保すべき責任、又は履行に関して講ずべき保証・保険等の措置
  14. 各当事者の履行遅滞その他債務不履行の場合における遅延利息、違約金、損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項
電子契約の適用(書面交付義務の特例)

相手方の承諾があれば、従来の紙の契約書に代えて、電子メール、クラウド型の電子契約サービス等の電子的な手段により契約を締結することが認められています。

標準請負契約約款の活用について

中央建設業審議会では、公正な取引環境を確保するため「公共工事標準請負契約約款」や「民間工事標準請負契約約款」を定めています。紛争防止のため、できる限りこれに準拠した約款を使用して契約を締結することが推奨されています。(国土交通省ホームページからダウンロード可能です)

03取引上の各種義務と禁止事項(法第19条〜22条)

発注者、元請負人、下請負人それぞれの対等な立場を維持し、健全な施工を確保するためのルールです。

注文者・元請の不当行為の禁止
  • 不当に低い請負代金の禁止(法第19条の3):自己の取引上の地位を不当に利用し、通常必要と認められる原価に満たない額で請け負わせてはなりません。元請が下請からの見積額に対し、法定福利費等を削って契約させることも違反となる恐れがあります。
  • 著しく短い工期の禁止(法第19条の5):注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して、著しく短い工期で契約を締結してはなりません。
  • 不当な資材等の購入強制禁止(法第19条の4):請負契約締結後に、その取引上の地位を不当に利用して、受注者が使用する資材や建設機械等の購入先を指定し、購入を強制してはなりません。
契約前の適切な「見積期間」の設定

注文者は、契約(または入札)の前に、受注者が工事内容や工期等を検討するために、以下の工事規模に応じた「見積期間」を設けなければなりません(法第20条第3項)。

予定金額 500万円未満 中 1 日以上
予定金額 500万円以上5,000万円未満 中 10 日以上 ※やむを得ない場合は「中5日」まで短縮可
予定金額 5,000万円以上 中 15 日以上 ※やむを得ない場合は「中10日」まで短縮可
受注者の義務
  • 建設工事の見積り(法第20条第1項・第2項):請負契約締結の際は、工事内容に応じて材料費、労務費等の内訳および準備に必要な日数を記載した見積書(見積積算書)を作成するよう努め、適切な額で契約を行う必要があります。
  • 前金払の際の保証(法第21条):前金払を受ける際、注文者から保証人の請求があれば、金銭保証人や保証会社による保証を受ける必要があります。(500万円未満の軽微な工事等を除く)
  • 現場代理人の選定通知(法第19条の2):工事現場に現場代理人を置く場合、その権限や注文者への意見申出方法などを、書面により注文者に通知しなければなりません。
一括下請(丸投げ)の完全禁止

元請業者が、請け負った建設工事を一括して他人に下請させたり(丸投げ)、下請業者がさらに孫請業者に一括して丸投げしたりすることは、原則として一切禁止されています(法第22条)。

【民間工事の例外規定】
あらかじめ発注者から書面による承諾を得た場合は例外的に認められますが、以下の工事については承諾の有無に関わらず丸投げは完全禁止となります。
  • 公共工事(すべての公共工事)
  • 民間の共同住宅(マンション・アパート等)の新築に関する工事

04特定建設業者の特別な義務

発注者から直接請け負う元請業者であり、一定規模以上の下請契約を結ぶ特定建設業者には、下請負人(一般の個人事業主や中小建設業者)を保護するため、より重い法的義務が課されています。

① 施工体制台帳・施工体系図の作成義務

発注者から直接工事を請け負い、下請代金の総額が税込5,000万円(建築一式工事の場合は税込8,000万円)以上となる場合、元請は「施工体制台帳」および「施工体系図」を作成し、現場に備え付け・掲示しなければなりません(法第24条の8)。

  • 再下請通知:下請負人は、さらに再下請契約を締結したときは元請へ通知する義務があります。
  • 施工体系図の掲示:工事関係者および公衆の見やすい場所に掲示する必要があります。
  • 【公共工事の特例】:公共工事においては、下請代金の金額にかかわらず、下請契約が発生したすべての工事で施工体制台帳・施工体系図の作成が義務付けられます。
② 下請代金の支払期日ルール
  • 引渡申出から50日以内の支払(法第24条の6):下請から工事完了・引渡の申出があった日から50日以内に、できる限り短い期間で下請代金を支払わなければなりません(元請が特定建設業者で、下請が一般建設業者の場合)。
  • 支払受領後1ヶ月以内の支払(法第24条の3):元請が発注者から出来高払や竣工払の支払いを受けた場合、その支払いの対象となった下請工事を行った下請に対し、支払いを受けた日から1ヶ月以内に代金を支払わなければなりません。
③ 下請負人の指導・是正および通報

特定建設業者は、下請負人がその工事施工に関し、建設業法や建築基準法、労働安全衛生法等の法令に違反しないよう指導に努めなければなりません(法第24条の7)。是正を求めても下請が従わない場合は、速やかに都道府県知事等の行政庁に通報する義務があります。

建設業法令遵守推進本部「駆け込みホットライン」

国土交通省では、不当な見積要請や支払遅延、丸投げなどの法令違反行為に関する相談窓口を設置しています。
TEL:0570-018-240 (受付時間 平日 10:00〜12:00、13:30〜17:00 ※土日祝日・閉庁日を除く)
公式ホームページの「建設業法令遵守ガイドライン」も取引健全化の参考にしてください。(http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000178.html)

05工事現場への技術者配置と現場専任(法第26条)

施工の適正化および品質管理を目的として、工事現場には必ずその工事に関する専門知識を持った技術者を配置しなければなりません。

ア 主任技術者と監理技術者の違い

工事現場に配置する技術者には、「主任技術者」「監理技術者」の2種類があります。

主任技術者

請負金額の大小、元請・下請に関わらず、すべての工事現場に必ず配置する必要があります。
※例外(特定専門工事):型枠工事・鉄筋工事において、下請代金4,500万円未満、注文者および下請の書面合意、元請の主任技術者が1年以上実務経験があり現場専任であるなどの要件を満たせば、下請側の主任技術者配置を省略(元請が兼任)できます。

監理技術者

発注者から直接工事を請け負い(元請)、下請に出す請負代金の総額が税込5,000万円(建築一式は税込8,000万円)以上となる場合に、主任技術者に代えて配置しなければなりません。

イ 技術者の雇用要件と資格要件

配置される技術者は、以下の「雇用関係」および「資格要件」を満たさなければなりません。

(ア) 雇用要件(直接的・恒常的な雇用関係)
技術者は、工事を請け負った建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係(健康保険被保険者証などで確認できる関係)にある必要があります。在籍出向者や短期雇用の人は、原則として主任技術者や監理技術者になることはできません。
区分 必要な資格・実務経験要件
主任技術者 以下のいずれかに該当する者
1. 実務経験者:学歴に応じた実務経験(高校指定学科卒業後5年以上、大学指定学科卒業後3年以上等)を有する者、または学歴不問で10年以上の実務経験を有する者
2. 国家資格者:1級・2級の施工管理技士、建築士、技能検定など資格保有者
3. 国土交通大臣特別認定者
監理技術者
(指定建設業※1)
以下のいずれかに該当する者
1. 国家資格者:1級施工管理技士、1級建築士、技術士など(上位資格に限る)
2. 国土交通大臣特別認定者
※1 指定建設業:土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種
監理技術者
(指定建設業以外)
以下のいずれかに該当する者
1. 国家資格者:指定建設業と同様の国家資格者
2. 指導監督的実務経験者:主任技術者要件を満たしたうえで、元請として請負代金4,500万円以上の工事について、2年以上の指導監督的実務経験を有する者
3. 国土交通大臣特別認定者
監理技術者補佐 以下のいずれかに該当する者(監理技術者をサポートし、現場兼任を可能にする役職)
1. 主任技術者の資格要件を満たす者のうち、国家資格者(1級施工管理技士補など技師補)
2. 国土交通大臣特別認定者

ウ 工事現場の専任制度(法第26条第3項)

公共性のある建設工事(個人住宅を除くほぼすべての工事)で、工事1件の請負金額が税込4,500万円(建築一式工事の場合は税込9,000万円)以上の工事を施工する場合、配置される主任技術者または監理技術者は、その工事現場に専任(他の現場と兼任不可)で常駐しなければなりません。

※専任の監理技術者については、公共・民間を問わず「監理技術者資格者証」の交付を受け、「監理技術者講習」を受講していることが必須です。

【専任配置の特例(兼任の許可)】
一定の要件を満たすことで、専任が必要な現場であっても例外的に兼任が認められます。
  • 専任特例1号(主任技術者の兼任):請負金額が税込1億円(建築一式は2億円)未満の密接な関連のある工事において、一定の要件を満たすことで2現場の主任技術者等を兼任できます。
  • 専任特例2号(監理技術者の兼任):専任の「監理技術者補佐」を配置することで、監理技術者は最大2現場まで兼任することが可能です。

エ 営業所の専任技術者と、現場技術者の兼任ルール

許可要件として営業所に常駐する「専任技術者(営業所技術者)」は、原則として工事現場の技術者(主任技術者・監理技術者)を兼ねることはできません。
ただし、例外的に以下の表に基づき、一定の範囲内でのみ兼任が認められています。

請負金額(税込) 営業所の専任技術者との兼任 現場代理人との兼任
主任技術者等 適用条件
4,500万円未満
(建築一式 9,000万円未満)
以下のいずれかを全て満たす場合に限り兼任可
1. 当該営業所で請負契約が締結された工事であること
2. 工事現場と営業所が近接し、常時連絡を取りうる体制にあること
×
4,500万円以上 1億円未満
(建築一式 9,000万〜2億円未満)
「専任特例1号」の兼任要件をすべて満たし、1現場に限り兼任可 ×
1億円以上
(建築一式 2億円以上)
× 兼任不可(専任の現場技術者を別途配置する義務があります) ×

※現場代理人については、現場への常駐義務(請負契約上の要件)等があるため、営業所専任技術者との兼任は金額にかかわらず「×(不可)」となります。

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